僕が2006年式のXL883Lを購入してから早いもので3年と数か月が経ちました。
今ではDIYでの整備も板につき、スポーツスターとの生活を
心から満喫しています。
しかし、その幕開けは決して「優雅なハーレーライフ」
なんて呼べるものではありませんでした。
今回は、僕がなぜあえてこのバイクを選んだのか、そして
「絶望と筋肉痛」に彩られた納車初日のドタバタ劇を振り返ります。
教習所の「甘い罠」と、キャブ車への執着
すべての始まりは、免許取り立ての頃に参加した教習所の試乗会でした。
そこで乗った最新のインジェクション車「XL883N(アイアン)」は、
まさに「理想のバイク」でした。回転上昇と共に盛り上がる、心地よい振動。
今まで乗ったどのバイクとも違う、圧倒的な高揚感。
「これだ。俺が求めていたのは、この自由だ。」
その日を境に、僕はスポーツスターの虜になりました。
しかし、ネットの海を彷徨ううちに、僕は余計な知識を得てしまいます。
「ハーレーの真髄はキャブ車にあり」「三拍子の鼓動こそが魂」。
……そんな言葉に毒された僕は、扱いやすい現行モデルではなく、
あえて2006年式のキャブ車最終モデル、XL883Lをヤフオクで
ポチっていました。 それが、あんな「荒くれ者」だとも知らずに。
ハイエースの中の希望、そして「都内放流」
納車当日。持つべきものは友です。友人がハイエースで
引き取り場所まで送ってくれました。
車内では「早くあの時の高揚感を味わいたいぜ」と夢が広がります。
しかし、現場に到着した途端、友人の顔色が変わりました。 受け渡し場所の
周辺は道が狭く、停車スペースがほとんどありません。無類の「路駐嫌い」
である彼は、サイドミラーを何度も確認したあと
「……ここ、マジで車停めらんねぇわ。地元のファミレスで
待ってますから。あとで合流しましましょう!」
(いや、マジで?)僕は自慢じゃないが、極度の方向音痴。
帰りはハイエースの後ろを金魚のフンのように
付いて行くつもりだったのです。
助手席のドアが開けられ、ヘルメットとグローブと共に僕は
土地勘のない都内の路上へ「放流」されました。
砂埃を上げて去っていくハイエースのテールランプを見送りながら、
僕は呆然と立ち尽くしました。
そして目の前には、画面越しに見ていたよりもずっとコンパクトで、
しかし独特の存在感を放つ鉄の塊が鎮座していました。
衝撃の初爆:それは「宣戦布告」の音
出品者の方とナンバーを付け、最低限の説明を受けて、
いよいよ一人きりのスタート。
出品者さんがチョークを引き、エンジンを始動させます。
「ドカドカドカドカ……パスンッ!パス!」
想像より音が大きい。何より破裂音が気になります。
明らかにクシャミ(バックファイア)の音です。
ガソリンも空に近かったので、ろくに暖機運転もせずガソリンスタンドへ。
幸いスマホホルダーがあったので合流はできそうですが……とにかく調子が悪い。
アクセルをひねるたびに路上に響き渡る「パスッ!」という破裂音。
道行く人の「なんだあの壊れかけのバイクは」という視線が痛い。
不安に押しつぶされそうだった僕は、インカムで先行する友人と通話をつなぎました。
もはやこれはツーリングではなく、救出作戦です。
走行:バイクではない、これは「加速する丸太」だ
なんとか発進し、ファミレスを目指します。しかし、走り出した瞬間に
驚愕しました。 「……何だこのバイク、めちゃくちゃ乗りづらいぞ!」
まず、姿勢がおかしい。ハンドルまでの距離が絶妙に遠く、低い。
上体がくの字に折れ曲がります。さらに追い打ちをかけるのが、サスペンションの硬さ。
路面のちょっとした凸凹を拾うたびに、衝撃がダイレクトに背骨を突き抜けます。
エンジンの振動もやたらに硬質です。
「重い、硬い、怖い。」
「風を切る」なんて優雅なものじゃない。僕はただ、
猛スピードで移動する「丸太のようなもの」から落ちないように耐えているだけでした。

アクセルをひねれば「パスンッ」とキャブがくしゃみをし、
加速すれば強烈な振動と固いサスペンションで
振り落とされそうになる。 必死にタンク(丸太)に抱きつき、
ハンドルにしがみついている僕の姿は、
さぞかし滑稽だったことでしょう。
完走、そして「泥沼」への招待状
汗だくになりながら、ようやくファミレスに到着しました。
バイクを停め、ヘルメットを脱いだ僕の顔は、おそらく土気色だったはずです。
食事と雑談を終え、おっかなびっくり自宅へ向かいました。
自宅の駐輪場に「丸太」を押し込み、エンジンを切った後。 全身の筋肉が強張り、
指一本動かすのも億劫なほどの疲労感の中で、僕は不思議な感情を抱いていました。
「……こいつ、上等じゃないか。絶対に俺好みに仕上げてやるぜ!」
今までのバイクにはなかった、野生の獣を御するような手応え。
ヤフオクという名のカオスからやってきたこの不機嫌なパートナーを、
いつか本当の「愛馬」に変えてみせる。 こうして、僕の
「整備とトラブルにまみれたハーレーライフ」の幕が上がったのです。





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